The Business Support Report 2020年11月1日号
今月は、「中小企業会計要領」について解説します。個人的な事ですが、今年は私が自治体労働者としての労働生活から、税理士としてこの会計事務所の業界に足を踏み入れて30年になる節目の年です。その間色々な問題に遭遇してきましたが、その問題の一つが「会計基準」の問題です。2000年前後から「国際会計基準」(IFARS)の時価主義会計の問題が大きな問題となってきました。当時から上場企業と中小企業との開示相手の問題等で、時価主義会計には、抵抗があったのですが、私の顧客企業様の中に上場を視野に入れた中堅企業が多かった関係で、上場に耐えられる「国際会計基準」を年頭に、繰延税金資産、負債や退職給付についての会計科目を使用して決算を組んできました。従って当時は「中小企業会計要領」や「中小企業会計指針」をめぐる論議には門外漢の立場でした。改めてTKC会報その他の特集を読むと、会計人の中で相当な議論があり、理論的には、「シングルスタンダード」か「ダブルスタンダード」かをめぐって相当な「論争」が繰り広げられた様です。結果的には、「ダブルスタンダード」の容認とIFARSと別の「中小企業会計要領」が2012年(平成24年)に策定されました。その概要は、非上場の中小企業を律するのは、商法と税法であることにかんがみ、確定決算主義を大前提に、中小企業経営者が実際に使える会計、そして金融機関や税務当局に信頼される会計を目指したものです。実務に携わる立場からの実感では、当時は、顧客の中には、税務署に提出する決算書(赤字決算)と金融機関に提出する別の決算書(黒字決算)の作成の依頼をされる人もおられて、金融機関も、企業から提出される決算書を頭から信用しておられない状況だったのを覚えています。
TKCが強調している「一気通貫の会計処理、税務申告」の体制とは、そのあたりを強調して、税務当局や金融機関にその適法性をアピールするものです。
中小企業会計要領の一番の問題点は、減価償却の問題です。税法は、定率法や定額法で法定繰入限度額を明示する一方、法人税法では、確定決算主義の立場から、その企業の決算における計上額を認容する立場をとっています。このことを中小企業会計要領では、「相当の償却」として整理しています。会計基準を無視した税法学者の中には、赤字企業に減価償却費を計上することは、時効の関係で、納税者不利になるので、税理士が訴えられる危険性を指摘される学者もおられて現場は苦難の選択を迫られる事になっていました。「相当の償却」とはそのあたりもクリアする知恵でもあったのでしょう。コロナ禍の中で、金融機関と連携し、中小企業の育成、発展の為に尽力します。詳細は巡回監査担当者にお尋ねください。
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