R1.6.1号

ビジネスサポート通信

The Business Support Report 2019年6月1日号

相続法(民法総続編)の改正と税務上の取り扱い

 相続法(民法相続編)が昨年(2018年)に約40年ぶりに改正され、その大部分が7月1日から施行されます。その概要と税務上の取扱いを明らかにしておきます。今回の改正法の大きな特徴は、高齢化社会の進展に対応して「配偶者居住権」の新設をはじめ自筆証書遺言の方式緩和などが織り込まれました。その骨子は次の6項目です。
第1 配偶者の居住権保護の方策①配偶者短期居住権の新設②配偶者居住権の新設 第2遺産分割等に関する見直し①配偶者保護の為の方策(持戻し免除の意思表示推定規定)②仮払い制度等の創設・要件明確化③遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲 第3遺言制度の関する見直し①自筆証書遺言の方式緩和②遺言執行者の権限の明確化③公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設 第4遺留分制度に関する見直し 第5相続の効力等に関する見直し 第6相続人以外の者の貢献を考慮するための方策です。
 今回の民法改正は、税法側から見ると相続税法の規定に民法の規定が歩み寄ったように感じられます。例えば、20年以上の婚姻期間を有する配偶者に対する自宅贈与での2000万円までの非課税規定に対して、民法は特別受益(遺産の先渡し)にあたり分割協議の際に差し引かなければなりませんでした。今回の民法改正で持ち戻し免除の意思表示の推定規定が導入された事に伴い、持ち戻し対象から外れることになりましたので、配偶者に対する自宅贈与は、今後活用される規定となりました。又、特別受益については10年以内に限定する規定となり税法との乖離(税法は3年以内)が少し緩和されます。
 又、相続人の妻の介護に報いる「特別の寄与」が従来認められなかったのに対して、特別寄与者として、相続人に特別寄与料の支払いを請求できるようになりました。
 これらに関する税法の取扱いですが、配偶者居住権は、土地と建物に分けて評価されます。考え方は借地権や借家権の場合と同様に、配偶者居住権を評価します。居住建物の所有権は、建物の評価額から配偶者居住権の評価を控除した金額となります。又土地の所有権は、土地の評価額から配偶者の敷地利用権を控除した金額となります。配偶者居住権の評価は、存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率により計算します。但し小規模宅地の評価減の適用範囲の問題で、相続人全体で考えた場合に評価額が高くなる場合が考えられますので注意が必要です。詳しくは担当者にお尋ねください。

ライン
先端設備等導入に伴う固定資産税ゼロ自治体は1,616団体
 中小企業庁は、平成30年度末における先端設備等導入に伴う固定資産税ゼロの措置を講じた地方公共団体が1,616団体となっていることを公表しました。
 平成30年度に税制改正では、平成30年6月6日から令和3年3月31日までの間に先端設備等導入計画の「認定」を受けた中小企業が行う生産性向上のための一定の設備投資に対して、地方公共団体が条例により3年間固定資産税の課税標準を2分の1から最大でゼロに軽減することを可能とする特例措置が創設されております。
 特例措置の対象設備は、導入計画に基づき新たに取得した機械装置や工具、器具備品、建物附属設備で、生産効率の向上や取得価額など一定の要件を満たすものとされているものです。平成31年3月31日時点での中小企業者が策定する「先端設備等導入計画」について、固定資産税を最も低いゼロとする措置を講じた地方公共団体は1,616団体で、認定計画数は2万1,999件、計画に盛り込まれた設備等の数量は合計7万4,730台におよび、設備投資見込額は約6,890億円となっています。
 事前の導入計画が必要ですので、ご留意下さい。
70歳雇用へ企業に努力義務
 政府は5月15日、「未来投資会議」(議長・安倍晋三首相)を開き、働きたい高齢者に対し70歳までの雇用確保を企業に求める具体的な方針を示しました。
 働く意欲のある高齢者を増やし、社会保障費の伸びを抑えることが狙いで、厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会の審議を経て、雇用期間を70歳まで引き上げることを柱にした高年齢者雇用安定法改正案を来年の通常国会に提出する予定です。
 現行法では、定年の60歳を過ぎても働きたい人に対しては(1)定年制の廃止(2)定年の引き上げ(3)定年後に継続雇用のいずれかによって、65歳まで継続雇用できる仕組み作りを企業に義務付けていますが、企業に求める具体的な方針として、65歳までの現行制度の義務を維持しつつ、他企業への再就職あっせん、フリーランスで働くための資金提供、起業支援、NPO法人での社会貢献活動の資金提供の4項目を企業が高齢者に行うよう新たに盛り込み、雇用確保期間を70歳までに引き上げるよう、強制力のない努力義務を設けることが挙げられています。
 医療や介護の必要がない「健康寿命」が延び、働く意欲のある高齢者は増えていますが、多くの企業が60歳を定年としており、65歳までの雇用継続にも苦労していて、人件費削減のため60歳以上の従業員の賃金は59歳時に比べて平均6割程度に抑えられている現状です。
 そのため、同じ内容の仕事をしても60歳を過ぎると手当が打ち切られるケースもあり、不当な賃金差別として会社を提訴するケースが相次いでいます。
 高齢者雇用を企業に押しつけるだけで済む問題ではなく、高齢者が主体性を持って「人生100年時代」を生きられるよう、政府は様々な支援策を講じることが急がれています。

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